『ゾンビ料理人』 脚本 その1

こんにちは、坂本です。
今回は執筆中の『ゾンビ料理人』の脚本、その前半部分を公開します。

○オープニング  廃墟(2〜3分)

ここは灰色と死臭に満ちた終末時代の日本。死者が歩く世界が日常となり、今や世の趨勢は人類にではなく、ゾンビたちのものとなりつつあった・・・・・・。

薄汚い廃墟の中、一匹のゾンビが人間の肉を貪っていた。元々は一人の人間が生活をしていた場所のようだが、今ではそのあるじも死霊のえじきとなっている。激しく、汚らしく、人肉にむしゃぶりつくゾンビ。
飛び跳ねた人肉の一部が、まだ簡易コンロの火で熱せられているフライパンの上に落ちる。ここに住んでいた人間は、ちょうど食事の最中に襲われたのだった。
ゾンビ料理人「オオゥ・・・・・・?」
次第に人肉はこんがりといい具合に焼け、ゾンビは頭からその焼肉に喰らいつく。一口かじる。
ゾンビ料理人「オアアァ!」
ゾンビ料理人、ハッとしたように何かを感じ、目を見開く(鼻先が焦げている)。
これはうまい!『2001年宇宙の旅』の骨→核兵器を搭載した宇宙船へつながるシーンと同じ曲(『ツァラトゥストラはかく語りき』)が流れ始める。
次々と人肉を火の中へと放り込むゾンビ料理人。徐々にスローモーションになっていく。次の瞬間、高々と宙を舞った人肉が例のクラシック曲とともに、洗練された人肉料理へと変化する。いつの間にやら大勢のゾンビが人肉料理を取り囲んでいて、思い思いに食事に興じている場面へ時間が飛ぶ。
そしてクラシック曲のフィナーレに近づくと、『ゾンビ料理人』のロゴが入る。曲の切りの悪いところでスパッと次のカット・曲に切り替わる。


○しげみ、野営地(1〜2分)

(BGM)へんてこなカントリーミュージック
移動しながらの生活を続ける3人組がいた。彼らは金属バットやおお木づち、ナイフなどの武器を持っている。今は夜中の10時を回るころで、今日はここで野宿をしようということになった。
サイトウ「じゃあ、今日はこの辺で休むとするか・・・・・・」
アリモリ「だね。明日はまた早く行動しよう」
サイトウ「そうだな。さて、と。今夜は誰から見張りをするか」
アリモリ「いつも通り俺とケンジのローテーションでいいでしょ。ショウタはまだまだ不安だしさ」
サイトウとアリモリ、コバヤシに目をやる。
コバヤシ「あ、うん。ぼくもまだまだ不安かな」
サイトウ「だけどよー、いい加減そういうこともできないと困るぜ。もし俺とリョウが死んだらお前、どうするんだよ? そん時は一緒に死ぬか? あ?」
サイトウ、手に持っているナイフの刃先をコバヤシに向ける。
コバヤシ「で、でも、ぼくじゃああいつらを追い払えないよ・・・・・・」
サイトウ「だからまずは見張りから始めて、少しずつ慣れていけってーの。あいつらが来たら、俺らを起こしてくれればいいから。戦わなくても」
コバヤシ「うーん、どうかな・・・・・・?」
アリモリ「慣れるって意味でもさ。そろそろ見張りの仕事も覚えてほしいんだ。生き残るために、大事な役割だし。とりあえず二時間だけ、な?」
コバヤシ「・・・・・・うん。わかった。やってみるよ」
サイトウ「じゃあ決まりだな! ショウタにも見張りができるようになれば、俺たちも色々と楽になるんだ。それじゃ、頼むぜ」
コバヤシ「う、ん。がんばる・・・・・・」
コバヤシ、しばらくは起きて見張っているのだが、途中から立ったまま眠ってしまう。そしてこのタイミングを見計らったかのように、二体のゾンビがコバヤシの元に現れる。片方のゾンビがコバヤシにかぶりつこうとするが、もう片方のゾンビがそれをたしなめる。この二体のゾンビは、眠った状態のコバヤシをどこかへと連れ去っていってしまう・・・・・・。