「でる部屋」脚本 本当に最後の修正版です

新たに脚本に修正をしました。
パソコンの表記が携帯に変わっています。

前回の修正版記事は消しておきます。何度もすいません。
これが本当の最後です。



*でる部屋

タイトル(黒い画面) 『東京工科大学』 『映画研究同好会』

(SE) カチャカチャカチャリとドアの鍵を開ける音

 ・井沼の部屋のシーン(サークル室) 夕方

 廊下に三つ段ボール箱が置いてある。ドアの前に少し身を小さくしながら立っている井沼と斉藤。

(井沼広太)以下(井沼) 「よしっ、開いた。」

(斉藤将太)以下(斉藤) 「じゃぁ、入るか」

(井沼) 「うん。」

 井沼がドアをゆっくりと開ける。部屋に入っていく井沼。後ろに置いてあった段ボールに手をかける斉藤。

(斉藤)「よいしょ、じゃぁこれそっち持ってくぞ」

(井沼)「あぁ、ありがとう。」

 ボーッとしていた井沼はそれに気づき急いで自分も段ボールを運ぼうとする。

(斉藤)「ウシッ、てか荷物これしかないんだな」

 荷物を部屋の中に適当に置き尋ねる斉藤。

(井沼)「うん。大体は差し押さえられちゃった。」

(斉藤)「大丈夫かよ・・・」

(井沼)「あ〜大丈夫、仕送りもらってるし」

(斉藤)「えっ、お前仕送りあって家賃払えなかったのかよ!」

(井沼)「へへっ」

 そう言うと井沼も段ボールを部屋に運び始める。斉藤が続けて話し始める。

(斉藤)「そう言えば、こんなとこの鍵なんで持ってんの?」

 井沼は「よいしょ」と荷物を降ろすと話し始める。

(井沼)「あっ、前にここの管理を頼まれてて・・・けど、鍵をなくしちゃったからやめさせられたんだよね。」

(斉藤)「ん?鍵持ってんじゃん。」

(井沼)「いや〜、結局カバンの底にあったみたいで・・・」

(斉藤)「・・・(唖然)。あっでも管理って言ってたけど人は来ないはずじゃないのか?」

(井沼)「あ〜それはね、僕がやめた後ここで事故があったみたいでね〜、それ以来この階含めて立ち入り禁止みたいだから大丈夫だよ。」

(斉藤)「ふ〜ん、そうなんだ。」

 そう言うと斉藤は段ボールの中を少し物色する。

(斉藤)「ん?」

 ごちゃごちゃした段ボールの中から携帯電話を取り出す。スプレー缶が同時に転がり落ちる。

(斉藤)「携帯じゃん。料金払えてんの?」

(井沼)「ちょっと、勝手にいじんないでよ。」

 井沼はそう言うと転がってきたスプレー缶を手に取り自分の持って来た段ボールの中に入れる。

(斉藤)「はいはい」

 そう言うと斉藤は段ボールの中に携帯を戻す。次にポケットの中に手を入れる。しかし、すぐ異変に気付き身体を触りながらあせって何かを探す仕草をする。そして、ふと思い出したかのようにする。

(斉藤)「やばい、下に携帯置いてきたかも・・・ちょっと見てくる。」

(井沼)「ああ」

 斉藤は慌てて部屋を後にし、階段を降りていく。一人になった井沼は足下の段ボールに手をかける。

(井沼) 「よいっ・・・」

 突如井沼は背を向けていた部屋に気配を感じる。気配の方に振り向く井沼。部屋は薄暗く、少し不気味な雰囲気を出している。
 口を半開きにして間抜けな表情で部屋を見渡す井沼。

(井沼) 「・・・ふあ〜(あくび)」

 あくびをして少しボーッとすると振り返り、再び段ボールに手をかける。
すると、そのすぐ背後に恐ろしい影が立っていた。



(SE) 不快なノイズ音
タイトル(黒い画面) 『出る部屋』



タイトル画面から井沼の住む部屋(夜)

・壁にもたれかかりながら床に座り、携帯で電話をしている井沼

(井沼)「うん。大丈夫、順調だよ。」

(井沼)「あっ、もうちょっと仕送り欲しいかな。」

(井沼)「いや、・・・家賃はちゃんと払えてるよ。・・・あ〜やっぱり今のままで大丈夫だよ。」

(井沼)「うん。分かった。」

 床に置いてある。水筒のカップに入った水をを飲む。それを置き、また話し始める。

(井沼)「うん。できたよ。斉藤って言う人。」

(井沼)「うん。ちょっとしつこい所あるけどいい人だよ。』

(井沼)「うん」

 カップを取ろうとする井沼。しかし見当たらない・・

(井沼)「うん?」

 すると自分から見て置いたとこと反対側にあるのを見つけて『おっ』と言いながら少し不思議に思いながらも何事もなかったようにカップを手に取り飲みだす。

(井沼)「あ、いや、何でもないよ。」

 カップを最初のとこに置く。

(井沼)「あ・・、もう遅いからこれくらいにしておくね。」

(井沼)「うん。母さんも、おやすみ〜」

 電話を切る井沼。カップの置いてあった所を気にするも立ち上がり、
寝る支度をする。(床に段ボールが敷いてあり、その上に掛け布団がある状態。小さい枕がちょこんとある。)

(井沼)「よいしょっと」


〈日常のシーンへ・・・〉



【井沼の日常のシーン】
 朝起きるシーンから始まり、歯を磨く、朝食をとる、学校生活を送っているなどのシーンを
一つ一つ見せていく。(個々のシーンは多めに撮っておき編集の際に選別する。)
見せ方は、一つのシーン(例えば歯を磨いている時に怪現象が起きるシーン)を見せたあとにドリー
または撮影しているカメラの前にものを置くなどをして画面が真っ暗になったあとに同様の移り変わらせ方で
次のシーンにつなげるというやり方で何パターンかを撮る。(覆いというカットつなぎの手法)
日常シーンのパターン
・朝起きるシーン
・歯を磨いているときに鏡に幽霊が映る。しかし、磨いている口ばかりを気にしていて気づかない。
・携帯で見ていた映像を消すと暗い画面に反射して主人公の後ろに幽霊が映る。しかし、気付かない。
・飲み物を飲んでいるカップの中から手が出てきて主人公を掴もうとする。しかし、携帯に釘付けで気づかない。飲もうとしたときにひこっむ。
カップに注いだ水の中に水筒から髪の毛が入ってくる。しかし、気づかずそのまま髪ごと飲んでしまう。
・友達と学内での会話シーン(※1)
・その他、授業を受けている。その階に備え付きのトイレで水筒の水をもらっている。気付かれないようにこっそりと部屋に向かう。などの普通の日常シーンも入れこむ。

(※1)会話内容
アドリブ等。
ホラー映画の話をしている。「リング」または「呪怨」「死霊のはらわた」などの作品についてマニアックな内容で
話している。(斉藤が一方的にしゃべっている)



・覆いカットから明けて井沼の部屋のシーン 夜中

 眠そうにしながら布団を整えて寝る準備をしている井沼。ふと窓を見ると黒い窓に反射して映っていたロッカーの中に黒い固まりのような何かが入っていくのを見つける。とっさに振り返るとロッカーは半開きになっている。

(井沼)「ん・・・ゴキブリ?」

 恐る恐るロッカーに近づく井沼。ロッカーをゆっくりと開けると日用品でゴチャゴチャした中をかき分けながら中を探す。

(井沼)「やだな〜」

 そうするとロッカーの上部裏側に何かが張り付いているのを見つける。「ん?」と言い、その張り付いているものをはがす。それは茶色く薄汚れ、かなりネンキの入った御札であった。しかし、井沼には何なのか分からない。少し眺めると

(井沼)「なんだこれ・・・汚い」

 と言い、クシャクシャッと丸めてゴミ箱に投げ込んでしまう。入った瞬間に「よしっ」と小さいガッツポーズをする。
そうするとまたロッカーの中を探る。

(井沼)「ん〜、気のせいかな?」

そう言うと振り向く井沼、するとすぐ目の前で女の幽霊が自分を睨みつけている。
 驚き放心する井沼。そのまま後ろに倒れ込み気絶してしまう。

〈幽霊を見て気絶した後のシーン〉

・暗転から開けて朝のシーン 

 開いたロッカーの前で仰向けになって横たわっている井沼。
ふと目を開け、何事もなかったかのように上半身だけ身体を起こす。
(開いたロッカーに頭をぶつけたりする。)

(井沼)「あれ・・・なんで、こんなとこで・・?」

 眠そうにしながらも不思議そうにあたりを見渡す井沼。少しボーッとし、だるそうに立ち上がると少し前に置いてある目覚まし時計を手に取り確認する。

(井沼)「うん?・・・う〜ん・・。うわっ!」

 慌てた様子で急いで支度をして部屋を出る。

・ 学校のシーン

 授業を受けている井沼。しかし、その顔はなんだか浮かない表情である。
 休憩時間に斉藤とテーブルの席(12階のテーブル席)で話す井沼。

(斉藤)「・・・でさぁ、そいつはそのまま・・・うん?なんだ井沼、どうかしたのか?」
 難しい顔をし、下を見ている井沼に少し心配そうに声をかける斉藤。
(井沼)「ん?あっいや・・・ん〜・・・、なんかね、今日一日な〜にか忘れてる気がして・・・」

 落ち着かない様子で頬を掻きながらぼそぼそと井沼は話す。

(斉藤)「何か心当たりとかあるの?」

(井沼)「う〜ん、昨日の事だったと思うんだけど、記憶の大事なところだけ、ん〜なんかぼやけちゃってるような感じで・・・」

 何かを思い出そうとしながらぎこちなく話す。

(斉藤)「ふ〜ん、大事なとこが見えないのか〜。ふっ(笑)」

(井沼)「は?」

 斉藤のおかしな返しに少し困惑する井沼。

(斉藤)「あ、いやいや何でもない。ん〜ま〜そんな事俺だってよくあるよ。そのうち思い出すでしょ。」

(井沼)「ああ・・うん・・・」

 斉藤の態度にちょっと不満そうにする。

・ 帰宅シーン

 あたりは日が落ち、もう暗くなっている。学校を出て、道路を歩いているシーンの後、部屋のある建物の前のシーンへその間井沼はずっとボーッとした状態でいる。
 階段を上っていく井沼。部屋のドアの前まで行き、自分の背負っているカバンのポケットから鍵を取る。開けようとし、ドア窓から見えるロッカーを見たときと同時に自分の体験した恐ろしい事をふと思い出してしまう。

(井沼)「ん?あっ、あ〜〜〜っ!そうだ、思い出したー。うわ〜ど、どうしよ〜!!」

 大きな声でジタバタと騒ぐ井沼。落ち着かなくなる。

(井沼)「ん〜、しかし野宿はしたくない・・・」

(井沼)「いや、けど、あれはもしかしたら夢っかも知れないし仮にそうでなくても・・・んっいや、い、いない・・・うん、そうだ・・いない、いない・・・よね・・うん。・・・いない」

 ぼそぼそと小声でしゃべりながら小さくうなずくと、ゆっくりとドアを開けて部屋の中に入っていく井沼。
 電気のスイッチをそっと付けると恐る恐る部屋の奥へ進んでいく井沼。明るくなった部屋の真ん中に立つとぐるりと全体を見渡したかと思えば、その後、窓、クローゼットなど部屋の隅々を探りだす。一通り探ると「ふう」と一息つき、水筒の水をカップに注ぎ、床に置くと携帯を付けていつも見ている好きなバラエティー番組を観だす。
 少し笑顔が戻り、置いたカップを番組を観ながら取ろうとすると、急にコップが井沼の手から逃げるようにススーっと動く。その瞬間、画面がノイズだけになる、それに続くように部屋の電気が切れ、部屋は携帯の映像だけで照らされる。

(井沼)「う、うひゃっ、うひゃひゃぁぁぁ〜」

 突然の事に驚いた井沼はおかしな声を上げて飛び跳ねる。

 すると、ノイズ音が流れ続ける中、「ふふふ」とかすかに女の笑うような声がしてくる。それに気付き、固まった井沼が画面を見るとノイズの中に薄気味悪い女の顔がうすらうすらと見えてくるそれと同時に笑い声もはっきりと聞こえだしてくる。

(井沼)「は・・ひ・・ほいーーっ」

 またも奇妙な声を出すと井沼は携帯を放り投げ、布団の中に頭から飛び込むように潜り込んでしまう。

(井沼)「はぁ〜・・やばい〜・・どうしよう・・」

 布団の中で前を向きながら怯えてまるまる井沼。
 その怯えている井沼の前に何ともいえない存在感を感じる。少し中が青白く光る布団の中で井沼以外の何かが井沼の前で動く。

(井沼)「ん?」

 突如、布団の奥から携帯に映っていた薄気味悪い女が現れる。それは井沼の顔ギリギリまで迫ってくる。

(井沼)「ウォシャシャー!」

 驚いた井沼は声を上げて布団から飛び出る。するとあたりは元どおりに電気はついて映像も普通にバラエティー番組を流していた。

(井沼)「・・・あ〜、びっくりした」

 段ボール布団の上で立ち尽くしながらぼそりというのであった。画面が暗転する。

・ 学校のシーン

(斉藤)「はっ?何それ?」

 画面が明けると学校のテーブル席(2階丸テーーブル)で井沼と斉藤  
が昼食を取りながら話している。数日後のテロップ。

(井沼)「いや〜、僕もよく分からないんだけど、何日も前からよくよく現れるというか・・・」

井沼の回想シーンへ(井沼の語りに合わせて映像が流れる。)

(井沼)「・・例えば、布団に入って寝ようとしたときに何となく嫌だな〜って気配がすると思って目を開けたら隣に女の人が居たりして、うわって思って目を閉じるんだけど、やっぱり気になって少し目を開けてみたら・・・なんか増えちゃってて・・・」

 回想明ける。食事をしながら聞いている斉藤。

(斉藤)「ふ〜ん、それ幽霊でしょー。ふっ、そんな話に俺はビビらねーよ。」

 馬鹿にしたように返す斉藤。

(井沼)「ホントだって〜、•••じゃあこの写真見てみて」

 そういいながら井沼は自分のカバンの中から小さいデジタルカメラを取り出し、おもむろに画面を見せはじめる。

(斉藤)「ん?」

(井沼)「どう?これ」

 画面には夜に撮ったであろう井沼の部屋が映っている。何の変哲もない部屋が映し出されている中、黒く映る窓に白い人影のようなものが映っている。

(井沼)「ほら、この窓のところ」

(斉藤)「ん?あ〜、いたいた。」

(井沼)「部屋で写真撮ると必ずこういうのが映ってくるんだよね」

(斉藤)「へ〜、うまく映ってるね〜。けど、ホトショでいじったでしょ。」

(井沼)「ちがうよ〜、・・・じゃあこれならどう?」

 画面の映像を切り替え動画を見せはじめる。

(斉藤)「ん」

・ 動画内容
井沼が洗面所前を映している。洗面所の鏡が映るとそこには髪で顔の隠れた男が映っている。映像がその男が映っているはずのところを素早く切り替えて映しても誰もいない。しかし、また鏡を映すと男が立っている。井沼は「いる。いない。」と言いながら繰り返し双方を映している。

(井沼)「どう?」

 少しどうだという表情で斉藤に返す井沼。

(斉藤)「んっ?あ〜、これはアレだろ、ん〜なんか編集みたいなことしてさぁ・・・」

少しだけ動揺した様子で話す斉藤。

(井沼)「え〜、これでも信じてくれないの?・・・じゃぁ、部屋に来てみれば分かるよ!すぐ近くだし、今日大丈夫?」

(斉藤)「え〜、めんどくさいな〜、・・・ん〜まっ、今日は暇だし、そんなものはいないという事を証明してやろうじゃないの。」

(井沼)「じゃぁ、決まりね〜」

 黒の画面になる。

・ 井沼の部屋 夕暮れ

 画面が明けると部屋の前にいる井沼と斉藤。井沼が先
導し、二人は部屋のある建物の階段を上がり部屋の前まで行く。

 二人は部屋の中に入り、暗くなっていたので井沼は部屋の電気を付ける。

(斉藤)「うまく住み着いてんな〜」

(井沼)「まーね」

部屋の奥に入っていく井沼に続いて斉藤も進んでいく。壁側に荷物をおいて立ち止まる井沼。
 斉藤も井沼と同じように荷物を部屋の隅に置く。

(斉藤)「・・・ふ〜ん。これといって何も感じないけどな〜」

(井沼)「ん〜、じゃぁどこでもいいから部屋の中で写真撮ってみて」

(斉藤)「よし、ちょっと待って」

 そういうと斉藤はポケットの中から携帯(ガラケー)を取り出すとそのカメラ機能を使い「ういっ」と言いながら部屋の窓側に向けて一枚写真を撮る。その後、すぐに写真を確認する。
 少しの間じっと見た後に

(斉藤)「ほら、何も映ってないじゃん。」

 そう言いながら携帯の画面を井沼に見せつける。
 井沼は少し斉藤の手にある画面を見つめると

(井沼)「•••あっこれそうじゃない?」

 そう言いと画面の右下の端を指差す。「えっ?」と言いながら斉藤も一緒に画面を見始める。指の先には小さく顔のようなものが映っている。

(斉藤)「ん?は?・・・じゃぁこれならどうだ!」

 動揺した斉藤は部屋中を動き回りながらかカシャカシャと撮りまくる。
 4~5枚撮るとはぁはぁと息を切らしながら画面を確認する。

(斉藤)「よし」

 撮った画像を一枚ずつ見ていくがどの写真にもうっすらと女らしき姿が写っており、画像を次に進めるごとにその姿がどんどんと画面に近づいてくる。「え?は?」と動揺の声を漏らしながら進めていく斉藤。
最終的には画面いっぱいに恐ろしい女の顔が映っている。
 次の瞬間に斉藤の携帯がメキリと音を立てて開く方とは反対側に折れ曲がってしまう。唖然とする斉藤。折れた携帯を少し気にしながらもゆっくりと井沼の方を向く。

(斉藤)「ご、ごめん・・・疑って、悪かった。」

 驚きを隠せない様子で謝る。

(井沼)「信じてくれたならいいよ。あっ、携帯ごめんね。」

(斉藤)「あっ・・・うん。ってか、ちょ、ここヤバくない?!」

(井沼)「あ〜、そうかもね〜」

(斉藤)「お前のんきだな〜、ん〜・・・。あっ!そう言えば昔の友達に親戚が霊媒師ってのがいたような・・・ま〜、全然信じてなかったけど、そいつに頼んでみる?」

(井沼)「おわ、凄い巡りあわせだね。じゃぁお願いしてもらおうかな。」

(斉藤)「よし。じゃぁ今から携帯で・・・」

 そう言うと壊れた携帯を見る斉藤。すぐに井沼の方を向き

(斉藤)「・・・は無理だから家に帰ったら番号調べてすぐ連絡するよ。・・・てか、井沼は今晩もここにいて大丈夫か?あれだったら霊媒師が来るまでウチに泊まってもかまわないけど。」

(井沼)「いいよ。電車代ももったいないし」

(斉藤)「えっ、いいの?」

(井沼)「うん。」

(斉藤)「そ、そうか・・・分かった。家に帰ったらそいつにすぐに連絡するよ。」

(井沼)「わかった。」

(斉藤)「よし・・・じゃぁいくね。」

 斉藤はそう言うと壊れた携帯を握ったまま荷物を手に取りドアの方に向かっていく。

(井沼)「ああ、じゃぁまたね。」

(斉藤)「あっうん。じゃぁ気をつけろよ。」

(井沼)「うん。」

 斉藤はドアを開けながら一言いうと慌てた様子で出て行く。
 閉まるドア。

・ 大学前のシーン 昼頃

大学前で誰かを待つようにして立ち尽くす斉藤。少しして一人の男が向かってくる。その身なりはワイシャツにネクタイ、ビジネスカバンといかにもサラリーマンといった格好だ。

(斉藤)「あっ、こっちです。こんにちは。」

(霊媒師、田中)「こんにちは」

(斉藤)「では、こちらです。」

・井沼の部屋のシーン

 部屋で井沼は足の爪を切りながら携帯でバラエティを観ている。そこに電話がかかってくる。

(井沼)「はい、あっもうすぐ来る?うん。わかった。は〜い。・・・あれ?携帯直ったの?あっ、公衆電話か、うん。待ってるね。」

 携帯電話を置くとまた爪切りに戻る。少しして映像を見ながら笑っているとドアをノックする音がする。

(井沼)「は〜い」

 携帯を閉じ、ドアを開けると斉藤に続いて田中が入ってくる。井沼と斉藤がサッと挨拶をすると井沼は田中に挨拶をする。

(井沼)「あっ、こんにちは。」

(田中)「こんにちは。」

 淡白に田中はかえす。

(斉藤)「あっこちらは、霊媒師のえ〜・・・」

(田中)「田中です。えーでは早速ですが部屋の中を見せていただいてよろしいでしょうか?」

(井沼)「あっはい。お願いします。」

 井沼が先導し部屋の中央に行くと田中は床にビジネスバッグを置き中から革製の手袋を取り出し付けると、窓や壁といった部屋の所々を何かを探すかのように軽くなでるように触っていく。その様子を井沼と斉藤はただただボーッと並んで眺めている。
 少しすると田中は「よくわかんないな〜」とぼそりと言いながら自身のビジネスバッグから数字のメモリと針のついた発信器のようなものを取り出すとその電源のようなものを付ける。そのとたんに発信器の針がビンと一瞬で最高の値まで達する。

(田中)「ん?え・・・」

 動揺した様子の田中は発信器をぽんぽんとたたいたり電源を付け直したりして確認している。しかし、発信器の値は変わらないままである。

(田中)「あ、ありえない・・・何だここは・・・」

 明らかに様子の変わった田中は発信器を置いてフラフラと井沼と斉藤の間を抜けていく。

(田中)「ちょっと、お手洗いに行っていいですか?」

(井沼)「あっ、どうぞ」

 落ち着かない様子の田中はトイレに入り手袋を洗面台に置き、水で顔をすすぎはじめる。そして、洗面台に手をつき、うつむく。

(田中)「お、落ち着け、はぁ、しかし、こんなところ俺の手には負えないぞ・・・どうする」(心の声)

 そのとき、ぽたぽたと洗面器の中に黒い液のようなものが落ちてくる。不審に思った田中は「ん?」と言い、鏡で自分の顔を見る。すると鼻から黒いドロドロとしたものが流れている。
 とっさに手で拭う。しかし、その後に耳や頭、口からなど頭の至る所から流れてくる。

(田中)「え?うっあ・・・」

 その勢いはどんどん強くなり頭から掛けてドロドロになっていく。

(田中)「あぁぁ、うわあぁぁぁぁぁぁー!!」

 田中は絶叫すると他に持たず、覗くようにしていた井沼と斉藤のあいだを抜けるようにしてトイレから飛び出ていってしまう。井沼や斉藤から見た田中にはドロドロのものは見えていなかった。

(井沼)「おわ〜、どうしよ、ここに住んでるの誰かに言われたらまずい・・・」

(斉藤)「そこか!え〜てか、頼みの綱いっちゃったよ〜」

(井沼)「だね〜」

(斉藤)「これからどうする?あの様子だとここは相当だぞ。」

(井沼)「ん〜•••、けど僕は住むとこ見つかるまでここにいるよ。そんなに居心地も悪くないし、それになんか部屋にいても寂しくないんだよね〜」

(斉藤)「え〜、お前よくそんな悠長な事言ってられんなー、さっきの田中さん見てなかったのかよ!」

(井沼)「大丈夫だよ〜、現に僕は怪我とかした訳でもないし」

(斉藤)「けどな〜」

(井沼)「大丈夫、大丈夫」

(斉藤)「危険だと思うんだけどな〜、ん〜・・・」

 斉藤が悩んでいるとゴソゴソと音がし、何かと向くと井沼が無邪気に田中のバックから大きいろうそくの様なものを取り出していた。

(井沼)「みてみて、こんなの入ってたー」

 暗転
〈この後、井沼の幽霊との日常のシーン〉
 ※このシーンの詳細は次のページで行います。



【井沼、幽霊との日常シーン】
 基本的には前回の井沼の日常のシーンの様に覆いというカットつなぎを行いながらダイジェストで井沼の幽霊との生活の様子を見せていく。

日常シーンのパターン(幽霊)
・ 寝ようと部屋の電気を消す。しかし、その後すぐに何もしていないのに電気がつく。何度も消すけど何度も付いてしまう。
・ 携帯を観ていたらふと窓が気になり、みてみると外に霊がいる。井沼は「こんばんは」と言った後に「入ります?」と聞く。
・ 床のカップを取ろうとするとサッと逃げる。それをまた取ろうとするとまた逃げられる。
・ 学校での斉藤との会話シーン。井沼だけが楽しそうに会話をしている。
・ 朝起きて洗面台で顔を洗って鏡を見たら自分のじゃない髪の毛が顔にびっしり付いている。
・ 朝のカップの中をのぞいたら自分じゃない顔が映っている。井沼は「おはようございます」と言いながらその中をを飲む。



・ 井沼の部屋 夕暮れ 

 最後の覆いのカットから明けると数週間後のテロップとともに部屋にいる井沼と斉藤。

(井沼)「じゃぁ、みててね。」

 そう言うと井沼は左手を前にだす。

(井沼)「カップお願いします。」

 そう言うと即座に井沼の手にカップが飛び込んでくる。井沼は見事にキャッチする。唖然としている斉藤。

(井沼)「よおし」

 そう言うと井沼は右手を前に出す。

(井沼)「枕お願いします。」

 そう言うと枕が井沼向かって飛んでくる。しかし、それは井沼の頭に当たってしまう。

(井沼)「ありゃ、失敗しちゃった。けど、凄いでしょ〜、名付けてポルターガイストキャッチ!」

(斉藤)「・・・井沼・・お前、」

(井沼)「ん?」

(斉藤)「・・・やっぱヤバいよ、完全に取り込まれてるよ」

(井沼)「ヤバくないよ〜、適応してるだけだよ。」

(斉藤)「井沼、俺はな」

 斉藤が話しだしてから会話のあいだあいだに誰かが向かってくる映像がピンポイントな部位だけを映して流れはじめる。

(斉藤)「心配でもうある人をもう呼んでいるんだ。」

(井沼)「ある人って?」

(斉藤)「それは最強の霊媒師とも言われている」

(井沼)「えっ?いやいやこさせなくていいよ。」

(斉藤)「その人は」

(斉藤)「浅原彰三だ!」

 斉藤が名前を言ったと同時にドアが勢いよく開く。そこには最強の霊媒師こと浅原彰三が立っていた。

(井沼)「うわっ、ちょ何ですか?!」

 その後も浅原はズカズカと部屋に上がり込んでくる。

(井沼)「えっ、まま、待ってください・・・」

 騒ぐ井沼を無視して斉藤は浅原に話しかける。

(斉藤)「あの、お願いします。」

(浅原)「分かっておる。しかし、ただならぬ気配だ。これは相当激しい戦いになるであろう。」

(井沼)「えっいや、戦わなくていいです。」

(浅原)「まずはこれじゃ」

 そう言うと浅原は自分のぼろぼろの手持ちカバンの中からビンに入った水や塩を取り出すと部屋中に撒きはじめる。

(井沼)「わー、汚さないでー」

(浅原)「やはりダメか、ならば」

 ある程度撒いた後にそう言うとカバンの中からまるで人の肌の皮膚で装丁したような気持ちの悪い本を取り出す。

(浅原)「先祖代々から伝わるこの書を使うことになるとはな。」

 浅原はそう言うと本を開き呪文のようなものを唱え始める。

(浅原)「なむなむななむぬまぬまぬなむなむ・・・」

 呪文を唱えていると突然声がしなくなしピタリと浅原は後ろを向いて立ったまま動かなくなってしまう。

(斉藤)「あれ?どうしたんですか?」

 浅原に反応はない。井沼と並んでいた斉藤はゆっくりと浅原に近づいていき、すぐ後ろまできたときに

(斉藤)「大丈夫ですか?」

 と声をかけると同時に肩を叩く、その瞬間真っ白になりボコボコになってまるで別人のような顔になった浅原が勢いよく振り返りものすごい形相で斉藤を睨め付ける。同時に斉藤は浅原に突き飛ばされ、後ろの壁までふっとばされる。

(斉藤)「あぁ〜」

 そのまま浅原は倒れた斉藤に向かっていく。

(井沼)「えっ?!斉藤くん!」

 井沼は「わー」言いながら近くに合った自分の水筒で浅原の頭を殴る。浅原は井沼の方を見ると手で振り飛ばす。井沼は窓側まで飛ばされ、壁に頭をぶつけてしまう。
 そこに浅原は近づいてくる。すかさず斉藤が飛び蹴りを後ろから食らわす。飛ばされた浅原の下から井沼がギリギリで抜けてくる。しかし、頭をぶつけた衝撃でクラクラしている。
 浅原は立ち上がり、斉藤のバックからはさみを取るとまた斉藤に襲いかかってくる。それを斉藤は両腕を掴みギリギリで抑える。
 今にもやられそうな斉藤を見て井沼はどうにかしなきゃとなるが立つことさえできない。そこに目の前にあの本が落ちていた。パクパクと動いて明らかに怪しい。そう思った井沼は前に田中が忘れていったビジネスカバンの中にろうそくとともに入っていたマッチを思い出し、近くに合ったので取り出すと。騒ぎで倒れて転がっていたスプレー缶を使って勢いよく本を燃やした。一定の間燃やすと本は何もしなくても勢い良く燃えた。
 すると斉藤を襲っていた浅原がガクガクとしはじめた。その隙に斉藤が逃げ出すと浅原はガクガクしながら立ち上がり、ゆっくりこちらを向くと突然「ぎえぇぇぇぇぇぇ」ととんでもない叫び声をあげたとたんに下半身を残して上半身が爆発してしまう。飛び散った血や肉片は部屋中を赤く染め、井沼と斉藤も真っ赤になってしまう。
 唖然とする斉藤の隣に井沼が立ち上がる。少し沈黙


 二人は顔を見合わせてまた部屋の方を見る。
暗転

・ 井沼の部屋のシーン 昼頃

画面が明けて数週間後のテロップ、片付いた部屋の布団でゴロゴロとくつろいでいる井沼。そこに斉藤がドアを開けて入ってくる。

(斉藤)「よっ」

(井沼)「あっ、おはよ〜」

(斉藤)「しかし、よくまだここに住めるもんだなぁ」

(井沼)「うん。けど、アレ以来からすっかり出なくなっちゃった。それに格安のいいアパート見つけたからそろそろ引っ越しかな。」

(斉藤)「案外除霊できてたのかもな〜、・・・あっそうだ。ほらこれ見てみ」

 そう言うと斉藤はポケットから最新のスマートホンを取り出す。

(斉藤)「いや〜、買っちゃったよスマホ。いいでしょ」

(井沼)「ふ〜ん、良かったね。」

(斉藤)「よおし」

 そう言うと適当に部屋の写真を撮る。

(井沼)「何やってるの?」

(斉藤)「何って実験だよ。本当に霊がいないか確かめてんの」

(井沼)「いないと思うよ。全然みないもん」

画面を確認する斉藤。

(斉藤)「やっぱいないか〜」

(井沼)「ちょっと見せて」

 横から画面を覗く井沼。

(井沼)「ん〜、・・・あれ、これ何?」

 画面に映る窓を指す井沼。そこには薄らとだが、霊媒師、浅原が映っていた。画面を見て沈黙する斉藤。
  次の瞬間、斉藤のスマホが五つほどに別れて散乱してしまうのだった。

                         終わり。